吹田市の泌尿器科、内科のももはらクリニック 緑地公園駅徒歩7分

MENU
ご連絡先はこちらTel.06-6330-5110

〒564-0063
大阪府吹田市江坂町5丁目15-14
メセナ緑地公園101

尿路結石

尿路結石はこんな病気です。

【尿路に石ができる】

「富裕病」とも異名をとるこの病気は人種、気候、文化などよりも食事の影響がはるかに大きいことが分かってきました(図1)。
読んで字のごとく「尿路」に石ができる病気で、その素材は尿に溶け込んでるカルシウムやシュウ酸、リン酸など。これらのミネラル物質が何らかの原因で結晶となり、有機物質も巻き込んで石のように固まってしまうのです。石ができる部位によって「上部尿路結石」と「下部尿路結石」に分かれますが、現在では前者、腎結石あるいは尿管結石が全体の約96%を占めています(※1)。後者の膀胱結石あるいは尿道結石は前立腺肥大症や尿道狭窄などの尿の出にくくなる状態の時にのみできます。なぜ石ができるのかは尿路感染、代謝異常、ホルモン、薬など、原因のはっきりしているものもありますが、多くは原因不明です。

石が作られる過程は、尿中の結石成分(ミネラル)の濃度が何らかの原因で過飽和状態になり、腎臓に結晶核が生じます。
その結晶が成長、凝集して結石となると考えられています。2:1以上の割合で男性に多い病気です。

(※1)出典:尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

【いろいろな結石があります】

「石」といっても体にできる石のこと、素材となる成分はいろいろです。そして、その成分によって色や形が違ってきます。成分を調べると発症の手掛かりがつかめるので、再発防止のためにも、自分の結石の分析結果を知っておくことは大変重要となります。

◆ シュウ酸カルシウム
尿路結石のなかでも多いのがシュウ酸カルシウムを主成分とするものです。尿中のシュウ酸が増えることが悪影響を与えます。金平糖状(図3)あるいは表面がギザギザな形になるので、小さくても尿管に引っかかりやすく、排出されにくいのが特徴です。このタイプの石が尿路結石の多くを占めています。

◆ リン酸カルシウム
この成分の結石は尿がアルカリ性になった時にできやすいことが特徴です。純粋なものはほとんど無く、上記のシュウ酸カルシウムと共存していることが多い。

◆ リン酸マグネシウムアンモニウム
尿路感染が原因で、男性に比べて尿道の短い女性に多い結石の成分です。尿素分解菌が尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解します。アンモニアにより尿がアルカリ性になり、この成分の結石が形成されます。いったんこの結石ができると、石が細菌を増やし、細菌は石をますます成長させるという悪循環が起こり、腎盂腎杯の形そのままのサンゴ状結石(図4)となりやすいです。

◆ 尿酸
尿が酸性になった時にできやすい結石です。痛風、高尿酸血症、高尿酸尿症などの人がなりやすいのですが、これは尿をアルカリ性にすることで改善が期待できます。

◆ シスチン
尿路結石には遺伝性のものがいくつかあります。その代表的なものがシスチン結石です。硬くて体外衝撃派などで破砕しにくいのが特徴です。これも尿をアルカリ性にすることで溶かすことが可能です。

こんな症状に要注意!

自覚症状は「疝痛発作」と呼ばれる激痛が特徴的です。冷や汗、吐き気を伴うこともありますから、胃腸の病気と勘違いすることも。あるいはまったく自覚症状がないとか鈍い痛みだけのこともあり、これを「サイレント・ストーン(沈黙の石)」と呼びます。

症状の違いは結石の大きさや存在している場所の違いによります。七転八倒の痛みがあるときは、「腎杯頸部」、「腎盂尿管移行部」、「尿管」などの狭いところに結石が詰まって尿の流れを阻害しているからです。痛みは腎臓のある背部から脇腹、下腹部へと広がりますが、しばらくして治まります。また、男性では精巣、女性では外陰部にも痛みを感ずることがあります。さらに、尿路の粘膜が結石によって傷ついた場合には血尿が出たり、膀胱にある場合には頻尿や残尿感があります。

結石が「腎盂・腎杯」に溜まっている時は痛みは無いか、あっても鈍痛程度。しかし、ここで結石がサンゴ状結石のように大きくなりすぎ、「水腎症」など腎臓が機能しなくなるほどの合併症を引き起こすことがあります。
また、結石、特に感染結石により尿流の通過障害があると、腎盂腎炎から「敗血症」という怖い病気を誘発しますから速やかに泌尿器科を受診してください。

治療法いろいろ

結石がどこにあり、どんな大きさで、その成分は何かによって治療法は異なります。大きく分けて「保存療法」と「低侵襲的療法」の2つが有ります。

「保存療法」
「自排」、つまり、自然に尿道から結石を排出させることです。水分を多量にとり、尿管の蠕動運動を活発にさせることで結石の下降を促します。6~9mm程度の結石ならおよそ3カ月以内に排出される可能性があり、小さい結石の場合に有効な方法です。
ほかに、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変える薬などを投与し、結石を溶かす治療を行います。これには数カ月あるいはそれ以上を要します。

「侵襲的療法」
侵襲的療法は結石が1cm以上の大きさで自排が困難、あるいは尿の流れが阻害されて水腎症になる恐れがある時、薬の効かない尿路感染症がある時、激しい痛みがある時に行います。
侵襲的治療の主流は、現在では「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」と呼ばれる方法です。これは、体外で発生させた衝撃波を体の中にある結石に集め、そのエネルギーで結石を砕くという方法です。衝撃波が通過した腎組織が損傷を受け、ほぼ全例で血尿が出ますが、手軽であり、最近では外来でも施行可能な機器も開発されました。細かくなった石は尿道より排出されます。大結石あるいは硬い結石でESWLに抵抗する場合、あるいは解剖学的にESWLが施行しにくい場合には内視鏡的に結石を取り出したり、同じく内視鏡的に超音波、レーザー、圧搾空気で石を砕く方法も行われます。今日では開腹手術はまれにしか行われなくなってしまいました。

『暮らしの心がけ』で再発防止

◆食生活
【水分をたっぷり】
食生活での心がけで注意したいのは水分の補給。
結石は尿の過飽和状態が要因となるので、それを防ぐために水分の摂取は大切です。尿中のミネラルの濃度を低くするために、1日2リットル以上の尿量を保つようにしましょう。「夜作られる」と言われる結石の予防には夕食後の水分補給がポイント。また、汗をかいて尿量が減る夏も努めて水分を補給するようにしてください。だからといって、アルコールを大量に飲むのでは逆効果です。酒類はワイン以外は酸性食品です。ビールにはシュウ酸、さらには尿酸のもとになるプリン体が多量に含まれています。

【カルシウムをしっかり、脂肪は少なめに】

尿路結石の約80%はシュウ酸カルシウムなどカルシウムを主成分としたものです。この種の結石の形成ないしは再発には尿中のシュウ酸が重要であることがわかってきました。このため、結石予防のためには、カルシウムをしっかりとったほうが良いのです。つまり、カルシウムは腸管中でシュウ酸と結合しシュウ酸カルシウムとなると腸より吸収されなくなり、尿中へのシュウ酸の排泄を抑制してくれます。女性では骨粗鬆症の予防にもつながるカルシウムをしっかりとってください。これと同じ位に大切なことは脂肪の摂取制限です(図5)。
脂肪を多くとると吸収されなかった脂肪酸が腸内でカルシウムと結合し、シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少してしまいます。このため、吸収可能な遊離のシュウ酸が増えてしまう訳です。この2つが食事の基本と思います。

【野菜、海草、青身の魚を適度に】

マグネシウムが豊富な野菜を食べることで結石の形成を抑制することができます。アルカリ性の野菜は体の酸性化を防ぎ、結石の抑制物質であるクエン酸を作ります。ただし、野菜ばかりの食生活ではシュウ酸の取り過ぎにつながりますから、1食1皿が目安。要はバランス良く食べることにつきます。ただし、ホウレン草、タケノコ、ナッツ類はシュウ酸を多量に含んでいますから、ゆでるなどの料理の工夫をしたいものです。また、シュウ酸を多く含む紅茶、コーヒーにはカルシウムを含むミルクを入れればシュウ酸とカルシウムが結合して不溶性の結晶になり、吸収されなくなりますし、おひたしにおかかをかけるのも体によい食べ合わせになります。
その他、青身の魚も結石予防に有効といわれますが、これも食べ過ぎは逆効果。イワシやレバー、納豆にはプリン体など尿酸の前駆体も含まれますから、バランスを考えながら食べましょう。

【塩分、砂糖は控えめに】

砂糖は尿中のカルシウム濃度を上げ、結石の形成に一役買いますから、取り過ぎに注意しましょう。特に、缶入りのソフトドリンクは約10%の砂糖とリン酸も含まれていますから要注意の飲み物です。塩分も尿中のカルシウムを増加させるので、なるべく控えるように心がけてください。

【バランスよく規則正しく】

偏った食生活や過食、運動不足になると結石ができやすくなります。食事はバランス良く規則正しくを心がけ、肥満にならないように注意しましょう。例えば、朝や昼は軽くすませて、夕食にしっかり食べるという不規則な食べ方はタブー。夜食べたものが尿中に排泄されて尿中の濃度が高くなり、結石ができる好条件になります。寝る直前の食事も同じ意味で厳禁。「結石は夜作られる」ことを肝に銘じておいてください。

定期検診

尿路結石は再発しやすい病気です。
再発防止や早期発見のためにも定期的な検診が決め手となります。医師の指示に従って検診を受けてください。
検査法は「尿検査」で血尿があるかどうか、「超音波検査」と「腎膀胱部X線単純撮影」で結石の陰影があるかどうかを調べます。それに腹部の痛みなどの問診でほぼ診断できます。そのほか、造影剤によって結石の大きさや場所を調べる「排泄性尿路造影」と呼ばれる検査もあります。

その他

いまだに大部分の例では原因が分からない尿路結石ですが「食生活」「代謝」「ホルモン」が関係しています。しかし、結石を作る成分があるように、それを抑制する成分も食物の中にあります。マグネシウム、クエン酸などがそれで「結晶化抑制物質」と呼びます。バランスの良い食生活が重要なのは、抑制物質をとる意味でもあるのです。

また、結石になりやすい年齢があります。20~30年前には20歳代であったピークは最近では40歳代、50歳代と高齢化してきました。多くの病気がそうであるように、尿路結石の予防もまた、規則正しい食事と適度な運動、そして上手なストレス発散法にあるようです。